9月22日
​17:00～18:30

岩野 英知
酪農学園大学 獣医学類 獣医生化学ユニット・教授

敵の敵は味方 !？​～ファージの力を利用して細菌と戦う戦略～

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招待コメンテーター

氣駕恒太朗 講師
自治医科大学 感染・免疫学講座 細菌学部門

新型コロナウイルスによる感染症の蔓延下の一方で、抗生物質に耐性を獲得した薬剤耐性菌は着実に広がっており、このまま何も対処しないと2050年にはガンの死亡者を超えて年間に1000万人以上の死者が出ると予測されている。その対策の切り札として細菌に感染するウイルスであるバクテリオファージ（ファージ）を用いたファージセラピーが注目されている。ファージセラピーは抗生物質より古くから細菌感染症治療に用いられ、特に東欧諸国では盛んに行われてきた治療法である。近年、多剤耐性Acinetobacter baumanniiの感染による危篤状態からファージセラピーにより復帰したパターソン症例（Antimicrob Agents Chemother. 2017 61(10):e00954-17）などが報告され、世界中でファージ製剤の開発や実用化の動きが活発に行われている。ファージの実用化においては様々な課題があるが、特に細菌のファージ耐性化に対する解決策をどのように考えるかという点は重要である。遺伝子の変異を伴う細菌のファージ耐性化は、そのトレードオフにより我々にとって有利となる細菌の表現系の変化を引き起こすことが知られている（薬剤感受性の亢進や病原性の低減など）。本発表では、ファージセラピーの現状と実用化への様々な課題、そしてファー耐性化について我々のデータも交えながら論じていきたい。細菌とファージ、それぞれおよそ30億年にわたり地球上で共進化を遂げて生き延びてきた歴史があり、そのシステムをうまく利用する戦略によりファージセラピーの実用化が見えてくるのではと考えている。

岩野 英知​
​酪農学園大学 獣医学類 獣医生化学ユニット・教授

酪農学園大学獣医学科卒業、同大学院に進み獣医学博士を取得。大学院時代は薬物代謝酵素に関する研究を進め、その後大阪大学たんぱく質研究所にてDNAのメチル化結合タンパク質の解析に加わる（研究生、ポスドク）。2001年よりテキサス大学MDアンダーソンガンセンターにてマウスの遺伝子工学について学ぶ。2003年より母校に戻り、2007年からファージセラピーの研究に着手している。薬剤耐性化の進む細菌感染症において、ファージセラピーを実用化して世の中に貢献したいと強く望んでいる。

 日本ファージセラピー 研究会ホームページ:
​ https://sites.google.com/view/jp-phage-therapy