睡眠は神経系を持つすべての生物に保存された生理現象である。一般的に、睡眠が不足すると、身体的・認知的な能力は低下するが、不足した睡眠を補うことでそれらの機能を正常に戻すことができる。このように睡眠は生理機能の恒常性維持において重要な役割を担う。それだけでなく断眠実験によって奪った睡眠は実験後、速やかに補われるように、睡眠自体も恒常的に制御されることは大変興味深い。それでは睡眠の恒常性を担う生物学的な実体はどのようなものだろうか。我々は、数理モデルとシナプスを操作する分子ツールを開発することで、前頭前皮質の興奮性神経細胞同士の結びつきの強さ(シナプス強度)がその実体の一つであることを報告した (Sawada et al., 2024)。ここでは、近年発展目覚ましい睡眠研究を概説するとともに、発表者らの最新の知見を紹介する。