4月18日
​​13:00～14:30

田久保 圭誉 
国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト長

造血幹細胞の代謝プログラムを明らかにする試み

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招待コメンテーター

末松 誠 教授
慶応義塾大学 医学部 医化学教室

瀬原 淳子 連携教授
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所

​血液・免疫細胞は私たちのからだの三分の二を占めており、酸素の運搬や生体の防御など多彩な機能を発揮して個体の生命を維持する。これらの細胞は骨髄に存在する造血幹細胞に由来している。造血幹細胞は定常状態では細胞周期を静止期に留めているが、分化細胞の需要が高まると増殖・分化して血液・免疫細胞システムの恒常性を保つ。こうした一連の造血幹細胞の活動は、細胞内の代謝制御機構によって支持されると考えられている。これまで様々な遺伝子欠損マウスの解析によって、造血幹細胞の数や機能の維持に必要な代謝経路が推定されてきた。しかし、複数の代謝経路が代償的に機能することや、既存の代謝解析では多数の細胞の溶解が必要であることから、稀少な造血幹細胞の代謝制御の実態には不明な点が多い。私たちはこうした現状を乗り越えるために、単一細胞レベルのリアルタイムATP濃度定量技術を開発して検討を行っている。本セミナーではこの技術を適用することで明らかになった造血幹細胞集団内のATP濃度の不均一性や、増殖・分化による代謝変化、エイジングで生じる代謝変容について紹介し、代謝学的な幹細胞性について議論したい。

田久保 圭誉 
国立国際医療研究センター研究所 生体恒常性プロジェクト長

2003年慶應義塾大学医学部卒業。在学中から実験科学の楽しさを知る機会に恵まれて、卒後は基礎研究者を志して、当時熊本大学から慶應に着任されたばかりの須田年生先生の研究室に大学院生として参加した。須田研究室では平尾敦先生に直接のご指導を頂きながら造血幹細胞と生殖幹細胞の研究を行って、2007年に慶應義塾大学大学院医学系研究科博士課程を修了した。そのまま須田研究室で助教、専任講師として大学院生たちと造血幹細胞や白血病幹細胞の研究を進めた。2015年からは縁あって国立国際医療研究センター研究所で研究する機会を得て、現在は代謝解析やイメージングを駆使しながら造血研究を継続している。幼き日に興味を持った生老病死の理をいま研究できていることに感謝している。

HP: https://takubolab.com/