“Exercise is Medicine”すなわち“(身体)運動は(万能)薬”とするフレーズが世界中で提唱され、「適度な運動」は身体に良いことは、医療関係者のみならず広く一般に認識されている。しかし、何をもって「適度な」とするのかどころか、運動の本体、言い換えれば、「運動ってなんだ?」がわかっていない。 有酸素運動であれレジスタンス運動であれ、全ての運動は例外なく身体局所のメカニカルストレスを生む。運動効果のメカニズムは血流改善というブラックボックスに葬られることが少なくないが、血管が分布しない部位にも細胞は存在する。これに対して、間質液に接しない細胞はおそらく存在しないし、総量は間質液が血液の約4倍あるにも関わらず、運動によって必ず生じるであろう間質液流動が細胞に及ぼす影響を運動効果のメカニズムと捉えた視点の研究は、これまでには骨関連のもののみであった。 講演者は足の接地時に脳内に伝わる衝撃で生じる脳内間質液流動により細胞に流体剪断力が加わりアンジオテンシン受容体シグナルが減弱することがジョギング・ウォーキングの高血圧改善効果のメカニズムであることを明らかにしつつある(論文改訂中)。本セミナーでは、冒頭で引用した“Exercise is Medicine”を“Exercise is Mechanical Stress”と言い換えようとする講演者の研究の今後の展望も含め紹介する。