7月27日
​14:00～15:30

西　晃弘 
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
​公衆衛生大学院疫学科・助教授

ネットワーク科学と人間行動

ソーシャルネットワーク分析は、主に「人と人のつながりを科学する」学問領域です。例えば、米国フラミングハム心臓研究のネットワークデータを解析すると、肥満やうつ、禁煙といった健康行動に関連する状態があたかも感染症のように人と人のつながりを伝って「伝染(social congation)」している様子がうかがえます。そういった行動は、現環境に適応しているためソーシャルネットワーク上で広がるのかもしれませんし、ただ一時的に広がっているが現環境にはミスマッチしているかもしれません。別の例としては、ネットワーク介入の方法論を用いて「人との人のつながり」の数をうまく削ぐことができれば、現行の新型コロナウイルス感染症の拡大は防げる可能性があります。ネットワーク科学の医療政策や公共政策への応用も待たれるところです。しかしながら、健康行動・社会行動分野のソーシャルネットワーク分析は、利用できるデータにも限りがあり、またデータ解析の方法論も発展途上であるため、医学・公衆衛生学の中でも未だ小さな分野にすぎません。数理生物学・進化動態学・データ科学・複雑系科学・脳神経科学など、各分野のエキスパートの方々にこの分野にご参入いただき、異分野融合が進めば、その発展は加速すると考えられます。本講演では、社会行動・健康行動学分野の研究にネットワーク科学がどのように使われているかを、演者の過去の研究などを例に用いながら解説します。さらに、セミナー担当者や参加者との幅広いディスカッションを期待しています。

招待コメンテーター

合原 一幸 特別教授/副機構長
東京大学 ニューロインテリジェンス国際研究機構（IRCN）

西　晃弘​
​カリフォルニア大学ロサンゼルス校公衆衛生大学院疫学科・助教授

医師・公衆衛生学博士。2007年東京大学医学部卒業後、北海道北見赤十字病院にて初期臨床研修修了。ハーバード大学にて公衆衛生学修士号（疫学・生物統計学）・博士号（社会行動科学）を取得後、2016年より現職。この間、イチロー＝カワチ教授（社会疫学）・ニコラス＝クリスタキス教授（医療社会学）などに師事。新型コロナウイルス感染症対策のシミュレーション研究のほか、社会格差や協力行動の研究をネットワーク科学の手法を用いて行っている。これまでの研究内容は、CNN、NY Times、NHK News 7、朝日新聞などに取り上げられている。

HP: https://ph.ucla.edu/faculty/nishi